2024年01月31日

遠藤啓輔のコンサート日記

 下野竜也が東京都交響楽団を指揮(池袋の東京芸術劇場)

 前半は津田裕也のソロでモーツァルトのピアノ協奏曲第24番。ソロ、オーケストラ共に柔らかな音色で、掛け合いのテンポ感にも一体感のある演奏。単に美しいだけでなく、転調によって不穏さを増した場面では、柔らかさはそのままに色彩にだけ恐ろしさを加える。モーツァルトの凄みを改めて感じた。


 後半はブルックナー交響曲第1番のヴィーン稿。東京に向かう新幹線の中でスコアをめくりながら、ヴィーン稿は年代が近い9番に似た要素が多いことを再認識。ブルックナーは1番の改訂を通して壮年期の自分と対話し、その若いエネルギーを9番に注ぎ込んだのでは?と邪推した。そんな先入観を持ちながら聴いたせいか、前衛的な和声の毒々しい存在感、という9番と同様の印象を、1番ヴィーン稿でも受けた。スケルツォの最後に追加されたトランペットの音型も、まさに9番に引用されるものだ。一方、後期交響曲のスケルツォには全く無くなった、トリオからスケルツォ主部への変化やコーダなどの面白さも印象的。自分のスタイルから捨て去ってしまった形式を、初期交響曲に再度向き合うことで懐かしく楽しんでいるようにも思われた。

 下野は他にも、ヴィーン稿に特徴的なホルンの活躍を豪快に鳴らして強調。そして、やはりヴィーン稿に特徴的なテンポの雄大な変化を、下野らしい自然な流れを持って表現。とりわけテンポを遅くした時の落ち着いたおおらかさが素晴らしい。

 下野は指揮するオーケストラによっては薄い響きになることもあるが、今日の都響との演奏は、弦を中心に分厚い堂々たる響きを作っていた。特に全曲の終わりでは、分散和音を演奏するヴァイオリンと細かく刻む低弦とが層を成しているのが見えるようだった。やはり都響はブルックナーを演奏するのに長けたオーケストラだ。今年の都響はブルックナーの注目すべき演奏会が目白押し、楽しみだ。

posted by 京都フィロムジカ管弦楽団 at 21:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 遠藤啓輔のコンサート日記 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック