2020年07月01日

遠藤啓輔のコンサート日記 2020.06.29

 センチュリー響に、ミュージック・アドヴァイザーに就任した秋山和慶が登壇しベートーベンを演奏(2020.06.29。シンフォニー・ホール)。第1ヴァイオリン8人型のオーケストラを、各奏者の間隔を広く開けて配置していたが、センチュリーはもともとどんな曲でも少ない人数で対応する楽団なので、ウィルス禍前と視覚的な違和感があまり無い。ただし、内側に陣取る第2ヴァイオリンとチェロのみ、一昨日の関西フィルと同様に第1プルトが首席一人になっていた。管打楽器は、雛壇上には木管とティンパニのみを乗せ、平土間にホルンとトランペットをステレオ配置にしていた。
 秋山は、例えばウォルトンの大曲やオネゲルの難曲におけるパーフェクトな名演も記憶に残る一方、独特の色彩感を見事に描き起こしたシベリウスも思い出深い。そうした秋山らしいベートーベンで、前衛的な和声を滋味深く響かせ、鷹揚な歌を基調にしつつも要所をかっちりと締めていた。センチュリー響もこうした秋山の表現を見事に実現していた。後藤龍伸率いる弦楽器が連続ダウン・ボウを印象的に演奏し、硬質なポイントを形成していた。また、広く分離していることでかえって弦の各パートが明瞭に聞こえ、特に骨格形成で重要な役割を果たす池原衣美率いる第2ヴァイオリンの存在感が光った。管楽器では特にホルンが表現の多様さを見せ、木管に柔らかく溶け込んだかと思えば、金属的な咆哮でシモテから威圧もする。また、2番・三村総撤の底力のある低音から、1番・水無瀬一成の甘美な高音へのソロのリレーでは、ベートーベンがホルンの多彩な音色を生かしてオーケストレイションしていることが良く分かった。
 1曲目は伊藤恵の独奏でピアノ協奏曲第4番。第1楽章冒頭の伊藤の柔らかな音が最初の波紋となり、それが湖面で美しく乱反射するような印象を受けた。第2楽章は逆に、オーケストラの厳めしい動機を発端にして伊藤との応答となっているのがよくわかり、第1楽章と第2楽章がポジとネガの関係になっていることに唸らされた。伊藤は軟らかい表現での瑞々しい響きも素晴らしいが、何よりも、覇気のあるパッセージにおいて華があるのが印象的だ。そしてフィナーレでは、北口大輔のチェロ・ソロの深々とした音色が圧倒的だった。前述の通り首席が一人目立つ配置だったので期待してはいたのだが、まさかこれほどまでの存在感が出るとは!
 伊藤のアンコールはシューマンのトロイメライ。インテンポの演奏で、こうしたスタイルだと要所を締める和声の斬新さがかえって引き立つ。
 休憩後は交響曲第3番。冒頭の2発の後、ほんの少しだけ溜めて第1主題に入った。ここで予告されたとおり、テンポに自由さを持った演奏だった。また、第1主題を3拍目を強調して歌いうなど、旋律の歌い方にも躍動感があった。圧巻は第2楽章で、フーガが躍動感にあふれていた。安永友昭の動的なティンパニの生命力にも大いに興奮させられた。
posted by ひつじ at 21:12| Comment(0) | 練習風景 | 更新情報をチェックする